唾の話その2。これも小6の時の話。たしかAちゃんに唾をかけた件から数ヶ月後のこと。
職員室のある校舎と校庭の間には大きな花壇があり、その日、理由は忘れたが先生の指示で、男子生徒数名で花壇の手入れをしていた。土を掘り返したり、囲いにつかっているコンクリートブロックの位置を変えるなどなど、まぁまぁ大掛かりな手入れだった。
◇ ◇
作業半ば、私はコンクリートブロックを運ぼうとした時、ブロックの側面から見える穴の中に蜘蛛の巣をみつけた。私はこの蜘蛛の巣を唾爆弾で破壊してやろうと、口から唾を垂らした。しかしその唾は口の位置が悪かったせいで、ブロックの側面に着弾した。
その様子をAくんが見ていた。彼は「きったねー」と言った。私は「蜘蛛の巣があるわ」とか返事したかもしれないが、特に話題にすることもなく作業を再開した。
◇ ◇
しばらくしてBくんがブロックを運ぼうとしていた。彼が手に取ったのが私の唾がついたブロックだったのだが、その時にAくんが「それルミちゃんの唾がついたやつやで」と言った。
Aくんがどういうつもりでそう言ったのかは今となってはわからない。直後、Bくんは「うわぁ」と言って近くにいたCくんに手を擦り付ける仕草をした。Cくんは「やめろぉ!」と言ってBくんを突き飛ばした。
Bくんは起き上がる時に近くにいた拳大の石をつかんで、それをCくんに投げつけた。このあたりで静観していた周りの生徒が止めに入って、騒ぎを聞いて職員室から先生も駆けつけた。私はおろおろしながら見ていただけだった。
◇ ◇
喧嘩は止まり先生の事情聴取が始まった。当然、後から私も呼び出された。
「なんで唾はいたんや!」
「蜘蛛の巣を壊そうとしました」
「そんなことしたらあかんやろ!」
事情聴取と説教、終わり。
自分のせいで喧嘩が起きた事案としてこの出来事は私の胸に深く突き刺さった。中学生の入学式の時に真面目になることを誓った時も、この件を思い出していた。