このエピソードはよく覚えている。強すぎる衝動性に意識の主導権を奪われていた小学生の私でも、「勉強だった」と思っているエピソードがあり、これはその内の1つである。
小5だったか小6だったか、授業は社会だったか歴史だったか、そこは忘れたがここからは大丈夫。
◇ ◇
徳川家康の話になり、先生が「徳川家康のことで知ってることある人は手をあげていいましょう」と言った。私は光の速さで手をあげて先生に当ててもらい、威勢よく言った。「埋蔵金!」と。
◇ ◇
私はそれで授業に参加しているつもりだった。でも先生の表情は曇った。そしてため息をついたあとに言った。
「あのね、くるみちゃん。みんなは授業の時間にね、おうちで勉強して、調べてきたことを言ってるんだよ」
たしかこんな言葉だった。
◇ ◇
少なくとも、私の言ったことの何がどうダメ、という内容ではなかった。みんなはこうしている、という話だった。それだけで十分だった。私は反省した。テレビで見たことを思いつきで言っただけだった。それではダメなのだ、ということがわかった。
翌日にはそんなこと忘れていつもの私に戻ったのであった。