小学生の頃の話。体育の授業があると、その前の休み時間に体操着に着替えなくてはならない。私はその時間がちょっと嫌だった。上着がうまく脱げないからだ。
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具体的に言うと、上着を脱ぐ動作に伴い、首から頭の天辺に向かって上着が通過するその一瞬がすごく嫌だったのだ。首周りや顔面に衣服の繊維が擦れたり、通過する衣服から眼球を守る為に目を閉じるのも嫌だった。だから脱ぐ時にいつもオタオタした。
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首のところで上着が引っかかるとパニックになった。「13日の金曜日」のジェイソンに襲われているような恐怖心が膨らんだ。
ぐいぐいと引っこ抜くつもりで力を入れても、首と顎のところでロックされた感じになって上着は全く動かない。こうなると誰かに手伝ってもらうしかない。実際に何度か「うあぁああ! 誰か引っ張って! 引っ張って!」と叫んだことがある。
今思えば、服のサイズが違っていて脱ぎにくかっただけの時もあったと思うけど、当時の私は親が用意した服を着ているだけだったので、そんな発想は持てなかった。
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このを卒業したきっかけはよく覚えている。小6の時に、近くの女子にお願いして服を引っ張ってもらった時に「もう、自分でやりなよ〜w」と笑いながら怒られた。私は(やっぱりもう一人でできなくちゃダメだよな、来年は中学生だもんな)と意識を改めて、それ以降は自分でなんとかするようにした。(脱げない)という気持ちを捨てて(脱ぐ!)という気持ちに集中してやるようにしたところ、なんとかなった。結局、やる気の問題だったといえる。
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それでも不快感が消えるわけではなかった。今だに上着を脱ぐ動作はあまり好きではない。例えば冬場は通勤時などにネックウォーマーをつけるが、スヌードタイプ(輪っかになってるやつ)のものではなく、前止めタイプを使っている。