高校生になった私は放課後の部活動に機械部を選んだ。ロボットをつくったり、チームでコンテストに参加したりして青春を送るつもりだった。
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中学生の大半を「普通の人になる為」に費やした私の学力は、どこの高校も厳しいと言われるほど低かった。唯一の進学の道は、形だけのペーパーテストと面接だけで合否が決まる推薦入学だった。人間関係をやり直したかった私は同じ中学から自分しか選んでいない高校を選んだ。
入学後に知ったが、その高校は他県で最も不良が集められているサバンナ工業高校だった。
それでも良かった。「たぶんここに適応できなきゃ社会に出ても無理だな」と、そう思うことができた。
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結局、高2の夏に地元でトラブルを起こして中退してしまうのだけど、少なくとも入学ホヤホヤの頃はまだ明るい未来を描いていた。部活だって青春を送るつもりで選んだ。プラモデルが好きだったし、パソコンのプログラムで何かつくりたいと思っていた私に相応しい部活だったと思う。
それなのに私は一度も機械部に行かなかった。
そう、行かなかったのだ!
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入部届を出してからたしか二ヶ月ほど経ってからだったと思う。私は「機械部の部活っていつになったら始まるんだろう」と思いながら、放課後になんとなく機械部の部室を覗いてみた。
そしたらなんと、部活をしていたのだ。
その光景を見た瞬間に私は理解した。
高校の部活は放課後になったら自分で部室に行くところだったのだと。
小学校のクラブ活動も中学校の部活動も、放課後の部活動の時間が何らかの形で明示されていたから、私は高校でも同じつもりで疑問に思うことすらなく、部活動の始まりを待っていたのだ。
ちなみに自分のクラスで機械部を選んだ人は私だけだった。
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結局、機械部の部室に行ったのはそれっきりになってしまった。
みんな真剣な顔で、賢そうで、こんなことがわからなかった自分なんて邪魔をしてしまうだけだな、と思ったから。
行かないを選択したことで、得たものや失ったものはないと思う。機械部で楽しくロボットをつくっている別の世界線の自分がいてほしいと、ただそう思う。