言壁の棺

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幕間6:小学生の頃、クラスメイトの友達のカードダスを盗んだ話

 小学3年生の時だったと思うが、クラスメイトの友達のカードダスを盗んだことがある。

 当時の私はファミコンがしたくてたまらない年頃の男の子で、口を開けばゲーム、友達の家に遊びに行けばゲーム、という奴だった。その行動があまりに極端すぎたのか、運が悪かったのかはわからないが、「〇〇君はゲームの為に家に遊びに来る」という他の親から苦情が先生に入り、それが小2の三者面談の時に注意事項として親に伝わり、とうとう私は遊びに行った先でゲームで遊ぶことを禁止されたほどだった。

 それでも我慢できなくて、こっそりではあったが友達の家でゲームをすることはあった。どうせ親はその場にいないのだ。

   ◇ ◇

 あの時は一人で遊びに外へ出た時、ゲームで遊ぶ家のクラスメイトを見つけた。そいつが誰だったのかは忘れたが、10人くらいの生徒と一緒だった。別のクラスとか別の学年の生徒もいた。誰かの家でゲームで遊ぶ流れを直観した私はさりげなくその子たちの群れに混ざり、行った先でお目当てのゲームにありつけた。

(当時の私は、外で偶然会ったクラスメイトや知り合いに無理やりついて行って一緒に遊ぶということが普通だった)

   ◇ ◇

 自分の番は全く回ってこなかったが、私はそれよりも大量にあるナイトガンダムのカードダスに夢中だった。私も集めていた。お小遣いがどれだけあればこんなに買えるのか、計算するだけでも楽しいくらい沢山あった。

 その中に一番ほしかった「騎士ガンダム」のキラカードがあった。

 ほしい、と思った。

   ◇ ◇

 それから数日後、経緯は覚えていないがまた他の生徒と一緒にその子の家へ遊びに行くことができた。

 そして私は無造作におかれたカードダスを手に取って、騎士ガンダムを探した。

 

 あった。

 

 みんなゲームを見ていて誰もこっちを見ていなかった。私は色んなカードを見るふりをして、そのカードをポケットにしまった。

 それから1時間くらしいてから、ゲームで遊ぶことを親から禁止されていることを口実に先に帰ることにした。

 私は家に帰ってから騎士ガンダムのカードを机の裏に隠した。他の人に見つかったら怒られる、という単純な理由だった。

   ◇ ◇

 それから数日後、学校から帰る途中に「おい」と声をかけられた。5人くらいいた。みんなあの子の家に遊びに行った時に一緒だった生徒たちだった。しかも高学年の奴らもいた。

 その内の一人が「おまえカード盗ったやろ」と言ってきた。私は歩き去りながら「盗ってないわ」と言い返した。また一人が「うそつけや!」と言った。私は無視して歩き去った。

 その出来事で私の緊張はピークに達した。もがきたくなるくらい苦しかった。泣きたかった。盗まなければよかった、と心底思った。生まれて初めて感じた罪悪感だったと思う。でも当時の私はその感情の名前を知らなかった。

 そのぐじゃぐじゃな気持ちをなんとかしたくて、私はカードの裏にボールペンで自分の名前を書いた。少しだけ苦しみが治まった気がした。

   ◇ ◇

 その後も罪悪感はゼロにはならなかった。何をしていてもカードのことが気になった。家に帰ったらまずカードの存在を確認した。もちろん誰にも見せることはできなかった。持っていないも同然だった。

 それから数週間後、これも経緯は覚えていないが、あのカードの持ち主の家族が引っ越すという話を聞いた。「らしい」ではなくほぼ決定事項であることを知り、私の緊張はプツンと切れた。「返すならもう今しかない」と思った。

 学校から帰った私はすぐにカードを取り出して、まず砂消しゴムでボールペンで書いた自分の名前を消そうとした。名前は全然消えなかった。

 諦めて外へ出で、自転車をガシガシ漕いでその子の家に行った。そしてインターホンを鳴らして、たしか「遊びに来ました」とか言って家に入れてもらったんだと思う。

 その子の部屋で二人になってから、ポケットからカードを取り出した。ごめんねと言いながらカードを返した。名前を書いてしまったこと、消せなかったことも謝った。引っ越すと聞いてすぐに返そうと思ったという、心変わりの話もした。

 その子は「いいよ」と言って許してくれた。

   ◇ ◇

 その話が終わった後、私はその子の家を後にした。

 もう二度と泥棒はしないと誓った。

 それから数年後、中3で私は万引きにハマってしまうのだった。